メール配信システムの運営を行っているうえで、「設定は正しいはずなのに、急に届かなくなった」「Gmail には届くが、Outlookでは迷惑メールに入ってしまう」といった相談を受けることがあります。
SPFやDKIM、DMARCといった認証設定が正常に行われているにもかかわらず、迷惑メールに振り分けられてしまう場合、送信者の「レピュテーション」が低い可能性が挙げられます。
では、なぜGmailとOutlookで受信結果が異なるということが発生するのでしょうか?
こうした状況を理解するうえで重要なのが、メール配信におけるレピュテーションは一つではなく、ISPごとに別々に評価されているという考え方です。
目次
レピュテーションは「ISP共通」ではない
メール配信におけるレピュテーションは、ブラックリストと同一視されがちですが、実際にはそれとは異なる概念です。
各 ISP(受信側メールサービス)は、それぞれ独自の基準で送信者を評価しており、その評価は他のISPと共有されるものではありません。
そのため、同じ送信ドメイン・同じ送信 IP から配信していても、ある ISP では問題なく届き、別の ISP では迷惑メールとして扱われる、といった状況が生じることがあります。
重要なのは、レピュテーションが「一時的な配信結果」ではなく、「一貫した送信元から、どのような配信を続けてきたか」という履歴の積み重ねとして評価されている点です。
ISPという呼び方について
本記事では、GmailやOutlook、Yahoo! Mail、iCloud Mailといった受信側のメールサービスを、便宜上「ISP」と表記しています。
ただし、厳密な意味での ISP(Internet Service Provider)は、本来はインターネット接続サービスを提供する事業者を指す言葉であり、メールサービスそのものを指す用語ではありません。
かつては「インターネット接続」と「メールサービスの提供」が同一事業者によって行われるケースが多かった、という歴史的事情のため、メール配信や到達性の分野では、現在でも慣習的に「ISP」という言葉が用いられています。
本記事でいう「ISP」は、「受信側で迷惑メール判定や到達制御を行う主体」を指す慣用的な表現です。
主要ISPごとの評価傾向
Gmail
Gmail では、SPF/DKIM/DMARC といった技術的な要件を満たした「正しい配信」であることが前提とされています。
そのうえで、レピュテーション評価に大きく影響するのが「受信者の行動」です。
メールが開封されているか、すぐに削除されていないか、迷惑メールとして報告されていないかといった反応は、継続的に評価へ反映されます。
技術的に正しい配信であっても、受信者にとって価値の低いメールが続けば、評価が下がる可能性があります。
この考え方は、Google が公式に提供している「Postmaster Tools」からも読み取ることができます。
Postmaster Tools では、送信ドメインや IP に対する評価、迷惑メール率、認証状態などが可視化されており、Gmail が「技術的な正しさ」と「受信者の反応」の両方を前提に評価していることが分かります。
また、Gmail のガイドライン改定については、「あなたは大丈夫?Gmailの改定された送信者ガイドラインとワイメールでの対応」でも詳しく解説しています。
Outlook(Hotmail系)
Outlook 系のメールサービスでは、Gmailと技術的な前提要件をほぼ同等とする、送信者向けガイドラインを公開しています。
Strengthening Email Ecosystem: Outlook’s New Requirements for High‐Volume Senders
Gmail同様、SPF/DKIM/DMARCといったドメイン認証は必須の事項となっています。
また、ガイドライン上の追加の推奨事項でも触れられている通り、「送信先リストの管理」ならびに「不達発生時の扱い」は、重要な要素と考えられます。
ワイメールでは、読者によるフォームからの自主登録やお客様による代理登録時に、本登録メールを送信してメールアドレスの実在と受信者の意思を確認する、「オプトイン/ダブルオプトイン」機能をご提供しています。
また、不達発生時には不達の発生原因別に読者情報に記録され、一定の回数を超過した場合は自動で配信停止状態に移行します。
これらの機能を適切に利用することで、読者リストの管理や不達発生時の扱いを容易にすることが可能です。
逆に言えば、読者リストを一度全削除して登録し直す運用や、基本設定の「エラーアドレスを削除または配信停止対象とする累積エラー回数」を非常に大きくするような運用は、Outlookでのレピュテーションを下げる結果になると考えられます。
Yahoo! Mail
Yahoo! Mail については、「過去の履歴をどの程度の期間評価に反映しているか」といった内部仕様が公式に公開されているわけではありません。
そのため、特定の ISP 固有の挙動として断定することは避ける必要があります。
一方で、Yahoo の送信者向けガイドラインでは、「読まれていないユーザー」や「スパムとして報告されたユーザー」への配信を続けると、配信メトリクスやレピュテーションに悪影響を与える可能性があることが示されています。
Sender Requirements & Recommendations
このような考え方は Yahoo に限らず、多くの ISP に共通する一般的な傾向と捉えることができます。
すなわち、直近の配信結果だけでなく、「これまでどのような配信を積み重ねてきたか」という行動履歴が、段階的に評価へ反映されているという見方です。
iCloud Mail
iCloud Mailについても、送信者向けの詳細な評価指標やツールは公式に公開されていません。
Appleは、送信者レピュテーションの内部的な評価基準を明示しておらず、配信事業者側から直接確認できる情報は限られています。
そのため、iCloud Mailの評価についても、「特定の仕様」としてではなく、「ISP 全般に共通する評価ロジック」として捉える必要があります。
Spamhausなどの大手メール関連組織は、iCloudを含むISP全般において、レピュテーション評価の基盤として「エンゲージメント」「認証」「送信の一貫性」が重要であると説明しています。
How does email reputation work?
同じ配信でもISPによって評価が分かれる
ドメイン認証などの前提となる共通項があっても、公開/非公開を問わずISPごとに評価の軸が存在し、また送信リスト内の配信先の偏りなどで期間あたりの配信量が異なります。
よって、「Gmailでは問題ないがiCloudでは届かない」「Yahooだけ到達率が低い」といった状況が発生する場合があります。
重要なのは、「ISP ごとに配信を完全に分けること」そのものではなく、「一貫した送信元から、用途が明確な配信を、無理のないペースで続けているか」という点です。
不達が多い配信を無理に継続すると、その蓄積自体がレピュテーションを下げる要因になります。
配信結果を確認しながら、必要に応じて送信を抑制する判断も、長期的な評価維持には欠かせません。
ISPごとの違いを前提にした運用
すべてのISPに対して、同時に最適化された配信を行うことは容易ではありません。
だからこそ、「ISPごとの違いがある」ことを前提にしつつ、送信元や配信内容の一貫性を保ち、送信量を段階的に調整する運用が重要になります。
初めてご利用の方へ IPウォームアップ機能を無効にしていませんか?
メールマガジン機能で、ISPごとに読者リストを完全に分離することも可能ですが、運用が複雑になります。
長期的には、「用途に応じた配信設計」と「不達を溜め込まない運用」を重視することが、安定した到達率につながります。
参考リンク:
最後に
特定のISPにメールが届かなくなったとき、それは必ずしも致命的な失敗を意味するわけではありません。
ISPごとに異なるレピュテーションが存在することを理解すれば、状況を冷静に分析し、改善策を検討することができます。
メール配信におけるレピュテーションは、単なる設定項目ではなく、「継続的な運用の結果」として形成されるものです。
一貫性と安定性を意識した配信こそが、長期的に信頼される送信につながると言えるでしょう。
免責事項
当コラムの内容は、コラム執筆時点での内容です。各ISPの評価基準や送信ガイドラインなどについては、今後変更される場合がございます。
