本日も、メール配信システム「ワイメール」のコラムをご覧いただきありがとうございます。
企業やサービスのドメインに似た「ドッペルゲンガードメイン」が、フィッシングやなりすましに利用されるケースがあります。
例えば、自社ドメインが「example.com」だった場合、「examp1e.com」のように一部の文字を置き換えたり、「example-support.com」のように文字を追加したりする方法があります。
こうした類似ドメインは、正規サイトと誤認させるための偽サイトや、正規企業になりすましたメールなどに利用される可能性があります。
また、メール配信において、正規のメールサービスなどに似たドメインを利用した「Typo Domain Trap」と呼ばれるスパムトラップも存在します。
ただし、ドッペルゲンガードメインとスパムトラップは同じものではありません。
本記事では、ドッペルゲンガードメインの特徴やリスク、スパムトラップとの関係、取り組みたい対策について解説します。
目次
ドッペルゲンガードメインとは
ドッペルゲンガードメインとは、一般に、正規の企業やサービスなどが利用しているドメインに似せて取得されたドメインを指します。
例えば、正規のドメインが「example.com」の場合、次のようなドメインが考えられます。
- examp1e.com
- example-jp.com
- example-support.com
このように、文字の置き換えや追加、組み合わせなどによって、正規ドメインと見間違えやすくする方法があります。
なお、「ドッペルゲンガードメイン」という名称自体に、すべてのケースへ適用される厳密な技術上の定義があるわけではありません。
また、正規ドメインに似ているというだけで、必ずしも悪意のあるドメインとは限りません。
問題となるのは、正規の企業やサービスと誤認させる目的などで利用されるケースです。
ドッペルゲンガードメインの代表的な手法
類似ドメインには、さまざまな作り方があります。
例えば、
- 文字を置き換える
- 文字を追加する
- ハイフンなどを加える
- ブランド名と別の単語を組み合わせる
- 見た目が似た文字を使用する
といった方法があります。
特に、見た目の似た文字を利用する「ホモグラフ攻撃」などは、正規のURLと区別しにくくする手法として知られています。
なりすましメールとの違い
ドッペルゲンガードメインと、なりすましメールは同じものではありません。
ドッペルゲンガードメインは、正規ドメインに似せた別のドメインです。
一方、なりすましメールは、正規企業などになりすまして送信されるメールそのものを指します。
例えば、攻撃者が類似ドメインを取得し、そのドメインを送信元としてメールを送ることで、正規企業からのメールであるかのように見せることがあります。
このため、ドッペルゲンガードメインは、なりすましメールに利用される手段の一つになり得ます。
ドッペルゲンガードメインがもたらすリスク
ドッペルゲンガードメインが悪用された場合、企業や利用者に以下のような様々な影響を及ぼす可能性があります。
フィッシングサイトへの悪用
代表的な用途の一つが、正規サイトに似せたフィッシングサイトです。
偽サイトへ誘導し、ログイン情報や個人情報、決済情報などを入力させることで、情報を不正に取得しようとします。
なりすましメールへの悪用
類似ドメインを送信元として利用し、正規企業になりすましたメールを送信するケースも考えられます。
例えば、請求書やアカウント確認などを装い、偽サイトへ誘導したり、添付ファイルを開かせたりする手口です。
ドメインが正規企業と似ていることで、受信者が送信元を正規のものだと誤認する可能性があります。
ブランドや信頼性への影響
なりすましによる被害が発生すると、利用者が正規企業からのメールやWebサイトまで警戒するようになる可能性があります。
そのため、ドッペルゲンガードメインへの対策は、情報漏えいなどの直接的な被害だけでなく、企業やサービスの信頼性を守る観点からも重要です。
ドッペルゲンガードメインとスパムトラップの関係
ここで、メール配信に関係する「スパムトラップ」について確認しておきましょう。
Spamhausでは、スパムトラップを、許可なくメールアドレスを配信リストへ追加する送信者などを識別するために利用されるメールアドレスとして説明しています。
Spamhausの解説では、Pristine Spamtrap、Seeded Trap、Typo Domain Trap、Dead Address Trap、Dead Domain Trap、Live Trapなど、複数のタイプが紹介されています。
Typo Domain Trapとは
今回のテーマと特に関係するのが「Typo Domain Trap」です。
Spamhausによると、Typo Domain Trapは、一般的なドメインに似たドメインに設置されたスパムトラップです。
Spamhausは「yaaho.com」「ynail.com」「homail.com」などを例として挙げています。こうしたアドレスへの送信は、誤入力されたアドレスなどが適切に処理されず、配信リストに残っている可能性を示す材料になります。
ここで重要なのは、Typo Domain Trapとドッペルゲンガードメインを同一視しないことです。
Typo Domain Trapはスパムトラップの一種です。
一方、ドッペルゲンガードメインは、正規ドメインに似たドメインそのものを指す広い表現です。
つまり、両者は「似たドメイン」が関係する場合がありますが、目的も意味も異なります。
スパムトラップは「原因」を確認するための手掛かり
スパムトラップへの到達を確認した場合、単にそのアドレスを探して配信停止するだけでは十分とはいえません。
Spamhausも、スパムトラップはデータ収集方法やリスト管理に問題があることを示す材料として捉え、トラップそのものを探すのではなく、根本的な原因を改善することを推奨しています。
そのため、スパムトラップへの到達が疑われる場合には、
- メールアドレスをどのように取得したか
- 登録時に本人の意思を確認しているか
- 不達アドレスを適切に処理しているか
- 古い配信リストをそのまま利用していないか
といった点を確認することが重要です。
メール配信で注意したいスパムトラップ対策
スパムトラップへの到達を避けるためには、特定のアドレスを探すことよりも、配信リストそのものを適切に管理することが重要です。
オプトインを徹底する
メールマガジンなどを配信する場合は、受信者本人の意思に基づいて登録されたメールアドレスのみを利用します。
特に、登録時に確認メールを送り、受信者本人が登録を確定する「ダブルオプトイン(Confirmed Opt-In)」は、誤登録や第三者による意図しない登録を防ぐ方法の一つです。
Spamhausも、Confirmed Opt-Inを質の高い配信リストを構築するための重要な方法として説明しています。
不達アドレスを適切に処理する
存在しないメールアドレスや、長期間利用されていないアドレスを配信リストに残し続けることは、リストの品質低下につながります。
特に、過去には有効だったものの現在は使用されていないアドレスが、後にスパムトラップとして利用されるケースもあります。Spamhausは、このタイプを「Dead Address Trap」として説明しています。
そのため、不達となったアドレスを適切に配信停止するなど、継続的なリスト管理が必要です。
入手経路が不明なリストを利用しない
購入したリストや、本人の明確な同意を確認できない方法で取得したリストは、スパムトラップや苦情につながるリスクがあります。
配信数を増やすことだけを目的にするのではなく、どのような方法で取得したメールアドレスなのかを管理することが重要です。
<購入した読者リストへの配信リスクと読者リストの効果的な増やし方>
長期間反応のないアドレスを見直す
長期間利用されていないアドレスへ配信を続けることも、リスト管理上のリスクになります。
Spamhausも、古いリストや長期間エンゲージメントのないアドレスについて、継続的な見直しや配信対象の整理を推奨しています。
ただし、メールの開封・クリックだけを機械的に「同意」や「利用継続」の証拠と考えるのではなく、登録状況や配信停止、過去の反応など複数の情報をもとに判断することが重要です。
ドッペルゲンガードメインへの対策
最後に、ドッペルゲンガードメインそのものに対して取り組める対策を紹介します。
正規のドメインを明確にする
まず、自社が利用している正規のドメインを整理し、社内外に分かりやすく示します。
例えば、
- 公式Webサイトのドメイン
- メール送信に使用するドメイン
- サービスのログインページのドメイン
などを明確にしておくことで、利用者が不審なドメインを見分ける際の判断材料になります。
類似ドメインを監視する
ドッペルゲンガードメインによる被害を防ぐには、自社ドメインに似たドメインが新たに登録・利用されていないかを定期的に確認することも重要です。
監視する際は、以下のようなパターンに注意しましょう。
- 文字の追加・削除・入れ替えなどによる類似ドメイン
- ブランド名やサービス名を組み合わせたドメイン
- 見た目が似た文字を使用したドメイン
CloudflareのBrand Protectionなどのドメイン監視サービスやブランド保護サービスを利用すれば、こうした類似ドメインの検知を自動化できる場合もあります。
類似ドメインを発見した場合は、Webサイトの内容やメール利用の有無を確認し、フィッシングやなりすましなどの不正利用が疑われる場合は、レジストラやホスティング事業者への報告、利用者への注意喚起など、早期に対応することが大切です。
不正利用を確認した場合は早期に対応する
類似ドメインを発見した場合でも、登録されているだけで不正利用とは限りません。まずは、Webサイトの内容やメールへの利用状況などを確認し、フィッシングやなりすましなどの不正利用が疑われるかを判断します。
不正利用が確認された場合は、レジストラやホスティング事業者などへの報告、利用者への注意喚起など対応し、必要に応じてサービス提供会社や関係機関への相談も検討しましょう。
早期に発見・確認・対応することで、顧客が偽サイトへ誘導されたり、なりすましメールを信じてしまったりするリスクを抑えやすくなります。
SPF・DKIM・DMARCによるなりすまし対策
ドッペルゲンガードメインへの対策とあわせて、自社ドメインそのものを悪用したメールのなりすまし対策も行う必要があります。
そこで重要になるのが、SPF・DKIM・DMARCです。
これらの認証については、過去にコラムで解説しています。
また、ワイメールではデフォルトでこれらの認証を有効にしてメールを配信することができます。
最後に
ドッペルゲンガードメインは、正規の企業やサービスなどに似せたドメインであり、フィッシングサイトやなりすましメールなどに悪用される可能性があります。
一方、メール配信における「Typo Domain Trap」はスパムトラップの一種であり、類似したドメインが使われる点では関係しますが、ドッペルゲンガードメインと同じものではありません。
企業がメールやドメインの信頼性を維持するには、
- 配信リストを適切に管理する
- オプトインを徹底する
- 不達アドレスなどを適切に処理する
- 自社ドメインに似たドメインを監視する
- SPF・DKIM・DMARCを設定する
といった対策を組み合わせることが重要です。
配信リスト管理、ドメイン監視、メール認証は、それぞれ役割が異なります。
一つの対策だけに頼るのではなく、それぞれの仕組みを理解したうえで継続的に運用することが、メールの信頼性と企業ブランドを守ることにつながります。
